<練馬区保護司會報第248号9頁掲載>

住まい支援の連携強化のための 連絡協議会

1.はじめに

法務省、国土交通省及び厚生労働省は、住まい支援の関係省庁及び関係団体で構成する「住まい支援の連携強化のための連絡協議会」(以下「本協議会」といいます。)を設置し、令和28月、第1回を開催しました。

本協議会は、生活困窮者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭、刑務所出所者等のうち生活や住宅に配慮を要する方々の住まいの確保や生活の安定、自立の促進に係るセーフティネット機能の強化に向けて、福祉分野・住宅分野等のより一層の緊密な連携を図るため、法務省、国土交通省と厚生労働省の関係局及び各関係団体で情報共有や協議を行うものです。要するに、住まいは生活の拠点であって、その住まいに医療・介護・生活支援等のサービスを包括的に提供する体制を地域ごとに構築することが生活を支えるために不可欠である、という認識に基づくものです。

本協議会には、法務省のメンバーとして矯正局長と保護局長、関連団体として更生保護法人全国更生保護法人連盟が参加しています。このように、保護司にとって本協議会は、対象者の住まい確保の観点から保護司業務に関係するものであると理解できます。ただし、上記3省の他に、3省が担当する住まい支援問題に関係する団体が複数参加しているので、対象者の住まい確保は、複数の住まい支援問題のうちの一つであることに留意が必要です。

 

2.第1回会議における法務省説明資料

1回会議において、法務省説明資料(以下「資料」といいます。)が提出され、公開されています。以下その内容をご紹介します。

(1) 資料では、①刑務所出所者等に対する居住支援の必要性、②保護観察における居住支援対策、③再犯防止推進計画(以下「推進計画」といいます。)における居住支援関連の施策に関して説明がされている。

(2) ①については、「仕事や住居がない」、「教育程度が比較的低い」「高齢である・障害がある」という刑務所出所者等が抱える生き辛さが紹介されている。例えば、「仕事や住居がない」に関しては、約7割が再犯時無職である、約2割が再犯時住居不定であることが示されています。また、満期釈放者の仮釈放申出状況については、満期釈放者の約9割がその申出をしていないが、その理由の44%が住居調整である(平成25年法務省調査)。又、満期釈放者の約4割は適当な帰住先がないという状況にある(平成30年矯正統計年報)。

(3) ②については、更生保護施設と自立準備ホームがある。このうち前者は、行き場のない刑務所出所者等を、自立資金を蓄えるまでの数か月間、収容保護する法務省の認可施設であり、仮釈放制度に不可欠な施設となっている。

(4) ③については、推進計画における「7つの重点課題と主な施策」の「①就労・住居の確保」にある住居の確保に関するもので、住居提供者に対する支援、公営住宅への入居における特別の配慮、賃貸住宅の供給の促進等が具体的な施策として明記されている。

(5) この推進計画における重点課題について、法務省は、具体的な施策として「住居の確保を困難にしている要因の調査等【施策番号29】」と「住居の提供者に対する継続的支援の実施【施策番号30】」を定めている。

前者に関して、犯罪をした者等の住居の確保を困難にしている要因について調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、その調査結果に基づき、身元保証制度の在り方の見直しを含め、必要に応じ、所要の施策を実施するとしている。

後者に関しては、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する者に対し、住居の提供に伴う不安や負担を細かに把握した上で、身元保証制度の活用を含めた必要な助言等を行うとともに、個人情報等の適切な取扱いに十分配慮しつつ、保護観察対象者等についての必要な個人情報を提供する。併せて、保護観察対象者等に対して必要な指導等を行うなど、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する者に対する継続的支援を実施することになっている。

(6) 上記の施策の背景には、

〇満期釈放となる最大の要因は、適当な帰住先が確保されないこと。

〇仮釈放の申出ができなかった者の約4割が住居調整不良による。

という現状があり、これを解消するための課題として次の二つが説明されている。

◎社会での適当な帰住先を確保した状態で社会復帰させるための施策

◎満期釈放となった場合であっても、地域の支援につなげる仕組みの構築

(7) 6)の課題に関する具体的取組として、①満期釈放者に対する受け皿等の確保と②満期釈放者の相談支援等の充実が説明されている。①は、釈放後の支援の必要性が高い満期釈放者について、生活環境の調整の結果に基づき、刑事施設、保護観察所、公共職業安定所、更生保護就労支援事業所、地域生活定着支援センター及び地方公共団体が、就労支援、職場への定着支援及び福祉サービスの利用支援等の面での連携を強化し、更生保護施設、自立準備ホーム、住込み就労可能な協力雇用主、福祉施設、公営住宅等の居場所の確保に努める。また、居住支援法人と連携した新たな支援の在り方を検討するとなっている。

②については、更生保護施設を退所した者に対する継続的な相談支援によるフォローアップを強化するとともに、就労支援又は居住支援と連携した満期釈放者に対する生活相談の在り方を検討するとなっている。

(8) 出所受刑者の刑務所への2年以内再入率について、満期釈放者は仮釈放者の2倍以上の差があり、全体を16%以下にするという政府目標を確実に達成し、更に数値を下げるためには、満期釈放者対策は不可欠であり、これらの施策によって、令和4年までに、満期釈放者の2年以内再入者数を2割以上減少させることを成果目標としている。

 

以上、説明資料の内容は、推進計画策定時に掲げられた重点課題の一つである「住居の確保」について、本協議会の趣旨に沿って説明するものです。保護司が保護観察業務を円滑に遂行する場合に、対象者の住居が確保されていることは基本的条件の一つであり、本協議会の議論等を通じて対象者の居住の安定化が進めば、保護司業務にも資するところとなります。本協議会の今後の状況を見守っていくことが大事であると考えられます。

以上(広報部)