再犯防止推進法の概要

 

○再犯防止推進法制定の意義

 

再犯防止対策は、我が国の重要な刑事政策の一つです。この再犯防止対策強化のため、超党派の国会議員による法案の検討後、「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号。以下「再犯防止推進法」といいます。)が全会一致で成立し、平成281214日公布・施行されました。

 

再犯防止法は、再犯防止等においは、犯罪者等の円滑な社会復帰を促進すること等が重要であることを踏まえ、再犯防止等に関する国や地方公共団体の責務や再犯防止等に関する施策の基本事項を明確にし、再犯防止等に関する施策の総合的、計画的推進を図り、犯罪被害を防止し、安全・安心な社会の実現を図ろうとするものです。

 

以下、法務省の編纂した「平成30年版 再犯防止推進白書」の「第1 我が国における再犯防止対策」の記述を主に参考にして、再犯防止推進法の制定の経緯等を簡単にご紹介します。

 

 *平成30年版 再犯防止推進白書クリック  概要➡クリック

 

 *「第1章 我が国における再犯防止対策」クリック

 

 *令和元年版 再犯防止推進白書クリック  概要➡クリック

 

○再犯防止推進法制定の背景等

 

再犯防止のためには、次のことが重要であると考えられています。

 

ž 犯罪や非行を未然に防止する取組を着実に実施すること

ž 捜査・公判を適切に運用することで適正な科刑を実現すること

ž 犯罪や非行をした者が犯罪の責任等を自覚し、犯罪被害者の心情等を理解するとともに、自ら社会復帰のために努力すること

 

しかし、犯罪や非行をした者の中には、貧困や疾病、し癖、障害、厳しい生育環境、不十分な学歴など様々な生きづらさを抱え、立ち直りに多くの困難を抱える者がおり、こうした多岐にわたる課題に対応するためには、刑事司法関係機関による取組のみではその内容や範囲に限界が生じていました。

<生きづらさの内容>

²  仕事や住居がない

・新受刑者の約7割が再犯時に無職、また、約2割が再犯時に住居不定

²  高齢(65歳以上)である・障害がある

・新受刑者1割以上が65歳以上の高齢者、1割以上が精神障害あり

²  教育程度が比較的低い

・新受刑者の約6割が高卒未満

 

こうしたことから、生きづらさを抱える犯罪をした者等を地域社会で孤立させないための「息の長い」支援等を行うためには、これまでの刑事司法関係機関による取組を真摯に見直し、国、地方公共団体、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者が緊密に連携協力して総合的に施策を講じることが課題となっていました。

 

この犯罪・非行をした人の「生きづらさ」に着目し、本人の反省・努力に加えて、彼らの立ち直りを支援する取組(就労支援、住居の確保、保健医療・福祉サービスの提供、就学の支援)が「再犯防止」ということになります。この再犯防止がうまく機能することにより、新たな被害者を生まない、安全・安心な社会の実現の実現が可能になってきます。

 

 *この再犯防止の定義は、法務省と株式会社小学館集英社プロダクションとの共催「再犯防止シンポジウム2018 雇用から始まる社会貢献~就労から出所者の社会復帰を考える~」の資料から引用しています。なお、再犯防止推進法では、「再犯の防止等」を「犯罪をした者等が犯罪をすることを防ぐこと(非行少年の非行をなくすこと及び非行少年であった者が再び非行少年となることを防ぐことを含む。)をいう」と定義しています(22項)。

 

そのような中2014年、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を見据え、国を挙げて再犯防止のための施策に取り組むために、党派を超えた国会議員らによる再犯防止を推進する基推進法の制定に向けた検討が開始されました。

 

再犯防止に関する様々な課題の検討に当たっては、法務省のみならず、警察庁、厚生労働省、文部科学省、国土交通省等多くの関係省庁が議論に加わり、201612月、再犯防止推進法の制定・施行に至りました。

 

この再犯の防止等に関する取組は、2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にうたわれている「誰一人取り残さない」社会の理念に合致する国際社会が目指す方向に沿った取組でもあります。また、2020年に我が国において開催される、犯罪防止・刑事司法分野における国連最大規模の会議である第14回国際連合犯罪防止刑事司法会議(コングレス)においても、再犯防止が重要論点の一つとされています。

 

*持続可能な開発目標(SDGsクリック

 

*第14回国際連合犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)クリック

 

○再犯防止推進法の概要

 

再犯防止推進法は全24箇条の小さな法律です。しかし、その24箇条には、再犯の防止等に関する取組に係る重要な内容が定めてあります。その最初に、次の内容の再犯防止推進法の制定目的を定める第1条が定められています。

 

第1条 この法律は、国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止等が犯罪対策において重要であることに鑑み、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。

 

この第1条にて、再犯の防止等のためには「国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等」が重要であるとされています。そのうえで、国・地方公共団体にはそのための責務があることを示し(4条)、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定め、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとしています(5条~9条)。

 

再犯防止推進法11条以下では、前記の「立ち直りを支援する取組」として、特性に応じた指導及び支援等(11条)・就労の支援(12条)・非行少年等に対する支援(13条)・就業の機会の確保等(14条)・住居の確保等(15条)その他の具体的な取組が列挙されています。

 

*再犯防止推進法の概要クリック

 

*再犯防止推進法の全文➡クリック

 

○再犯防止推進計画

 

再犯防止推進法71項に基づく国の責務として定められる「再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画」が再犯防止推進計画(以下「国の推進計画」といいます。)といわれるものであり、平成291215日閣議決定により最初の国の推進計画が策定されています。推進計画には、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図るため、今後5年間(平成30年度から平成34年度末まで)で政府が取り組む再犯防止に関する施策が盛り込まれています。

 

国の推進計画に関する全般的情報については、「法務省トップページ > 政策・施策 > 刑事政策 > 再犯防止対策」に有益な情報・資料が掲示されていますので、ぜひ参照してください。

 

また、再犯防止推進法8条は、国の推進計画の内容を勘案して地方再犯防止推進計画(以下「地方の推進計画」といいます。)を策定し、公表することを都道府県・市町村に要請しています(努力義務)。これを受けて都道府県・市町村では、それぞれの地方の推進計画を策定し、公表を始めています。

 

東京都では、令和元年7月に「東京都再犯防止推進計画」を決定し、公表しています。練馬区においても、国および東京都の推進計画の内容を勘案して「練馬区再犯防止推進計画」が制定・公表されることが期待されるところです。

 

  *国の再犯防止推進計画➡ 全文 概要

 

  *東京都再犯防止推進計画➡ 全文 概要 当HP記事

 

  *東京都の再犯防止対策全般➡クリック

 

以上、再犯防止対策の根拠となる再犯防止推進法につきごく簡単に説明しました。今後は不定期ではありますがシリーズとして、再犯防止について、その概要を順次解説していきたいと思います。

 

(広報部 澤 重信)

 

 

(出所:平成30年版再犯防止推進白書6頁)